Kengo Nagashima



この文章について

自分が初めて論文を投稿したときに、投稿先の学術雑誌をどう選べばよいのか分からず悩んだ記憶があります。 生物統計学関連の学術雑誌について書いた文章はあまりないような気もするので、個人的にまとめを作ってみました。

統計学関連の雑誌に関する研究・情報

生物統計学を含む統計学関連の学術雑誌に対して調査を行った結果をまとめた論文がいくつかあります(Theoharakis & Skordia, 2003; Varin, Cattelan & Firth, 2013)。 詳細は割愛しますが、統計家が統計学の学術雑誌をどう見ているか、統計学の学術雑誌間の相互引用のモデリングについて書かれています。 また、Davidian先生のST 810Aの講義資料は非常に参考になります(学術雑誌については"Academic publication: Journals and the journal editorial process"という資料)。

この文章は、生物統計学の研究をしている人がどういう学術雑誌に投稿していそうなのかと、そのレベル感について個人的な視点でまとめたものです。 上述の文献は(当時の)主要な統計学関連の学術雑誌を対象にしているので、これらに載っている学術雑誌のうち生物統計学に関連するものを抜き出し、また、最近の動向を踏まえて自分が投稿しそうな学術雑誌をまとめてみました。

雑誌名 生物統計 臨床研究 疫学 理論 応用 ソフトウェア 概要
Biometrics x International Biometric Society (IBS) の公式雑誌。本来の意味でのBiostatisticsの研究が載る雑誌。少し理論的。かなり載せたい。
Biostatistics x 基礎生物医学を含む健康科学に応用できる統計手法の研究が載る雑誌。ゲノム関係の手法が他の雑誌よりもよく載っている。かなり載せたい。
Stat Med x 臨床研究に関連する統計手法の研究がよく載る雑誌。結構載せたい。
Stat Methods Med Res (SMMR) x 臨床研究に関連する統計手法の研究がよく載る雑誌。昔はレビュー中心だった。結構載せたい。
Biom J x International Biometric Society (German, Austro-Swiss, Italian Region) の公式雑誌。臨床研究に関連する統計手法の研究がよく載る。載せたい。
Pharm Stat x Statisticians in the Pharmaceutical Industry (PSI) の公式雑誌。医薬品開発と臨床研究関連の統計手法の研究がよく載る。載せたい。
J Biopharm Stat x 医薬品開発と臨床研究関連の統計手法の研究がよく載る。まあ載せたい。
Stat Biopharm Res x American Statistical Society (ASA) の公式雑誌。医薬品開発と臨床研究関連の統計手法の研究がよく載る。まあ載せたい。
Biostat Epidemiol x International Biometric Society (Chinese Region) の公式雑誌。臨床研究と疫学に関連する統計手法の研究が載る。2017年に創刊なので未知数。
Jpn J Biometrics x 日本計量生物学会 (International Biometric Society Japanese Region) の公式雑誌。和文が多く、総説などが豊富でとても勉強になります。
Res Synth Methods x x メタアナリシスに関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。システマティックレビューの実務に関係するものも載る。結構載せたい。
Clinical Trials x x 臨床試験に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。プロトコル論文も載る。載せたい。
Contemp Clin Trials x x 臨床試験に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。プロトコル論文も載る。まあ載せたい。
Int J Biostat x x 臨床研究に関連する統計手法の研究(セミパラメトリック法に重点を置いている)がよく載る雑誌。因果推論の方法論研究がよく載っている。載せたい。
Epidemiol Methods x x 疫学に関連する統計手法の研究がよく載る雑誌。まあ載せたい。
J Roy Stat Soc Ser B Methodol (JRSS B) x x Royal Statistical Society (RSS) の公式雑誌。統計学全般の方法論研究が載る雑誌。理論的。すごく載せたい(けど今のところ機会はない)。
J Am Stat Assoc (JASA) x x American Statistical Society (ASA) の公式雑誌。統計学全般の方法論研究が載る雑誌。理論的。すごく載せたい。
Biometrika x x 数理統計学っぽい研究が載る雑誌。理論的。すごく載せたい(けど今のところ機会はない)。
J Roy Stat Soc Ser C Appl Stat (JRSS C) x Royal Statistical Society (RSS) の公式雑誌。統計学全般の方法論研究が載る雑誌。結構載せたい。
Comput Stat Data Anal (CSDA) x Computational and Methodological Statistics (CMStatistics) とInternational Association for Statistical Computing (IASC) の公式雑誌。計算手法とアルゴリズムの研究が載る雑誌。載せたい。
Lifetime Data Anal x 生存時間解析の方法論研究が載る雑誌。載せたい。
Jpn J Stat Data Sci x 統計関連学会連合の公式英文雑誌。2018年に創刊。
J Causal Infer x x 因果推論の方法論研究が載る雑誌。載せたい。
Int J Epidemiol x International Epidemiological Association (IEA) の公式雑誌。疫学に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。主に疫学研究が載る。結構載せたい。
Epidemiol x International Society for Environmental Epidemiology (ISEE) の公式雑誌。疫学に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。主に疫学研究が載る。載せたい。
J Clin Epidemiol x 疫学に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。主に疫学研究が載る。載せたい。
Am J Epidemiol x Society for Epidemiologic Research (SER) の公式雑誌。疫学に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。主に疫学研究が載る。載せたい。
J Epidemiol x Japan Epidemiological Association (日本疫学会) の公式雑誌。疫学に関連する統計手法の研究も受け付けている雑誌。主に疫学研究が載る。載せたい。
J Stat Softw x Foundation for Open Access Statistics (FOAS) の公式雑誌。統計ソフトウェアの論文が載る雑誌。載せたい。
R Journal x R Foundationが後援している雑誌。Rに関する論文が載る雑誌。まあ載せたい。
Stata J x Stata Pressが発行している雑誌。Stataに関する論文が載る雑誌。まあ載せたい。

「すごく載せたい」と「かなり載せたい」は個人的に難易度が高いと思っている雑誌で、チャレンジしたいです。テーマにもよりますが、「すごく載せたい」or「かなり載せたい」から投稿して、できれば「結構載せたい」と「載せたい」のあたりには載って欲しいイメージです。 昔はほぼ上の方の学術雑誌を投稿対象に考えていましたが、最近は疫学関係の雑誌の方法論の枠にも投稿しようと思うようになりました(どちらも狭き門ですが)。

オープンアクセスジャーナルについての情報

生物統計学の分野でも、論文掲載料がかかるタイプのオープンアクセスジャーナルが増えてきました。 自分は上に記載した雑誌に優先して投稿していく方針のため、オープンアクセスジャーナルを投稿先として考慮した経験がありません。 オープンアクセスジャーナルは論文掲載料で収益を上げるビジネスモデルであるため、沢山出版されるほど出版社が儲かる仕組みになっています。 そのため、査読の期限が極端に短く設定されている場合があり、こういった点は上に挙げた雑誌と異なると思います。 上に挙げた雑誌の査読期限は1ヶ月~2ヶ月が標準的ですが、オープンアクセスジャーナルでは査読期限が10日に設定されている雑誌もあります。 査読の期限が極端に短く設定されていると、色々な影響が出てくると思います。

BMC Med Res Methodol (APCは$2790) は、ある程度認知されているような印象があります。 別のBMC系列の雑誌しか査読した経験がないのですが、査読期限は1ヶ月でした。

MDPIのStats (APCは1200 CHF、$1200ぐらい) は査読期限は標準で10日、延長して14日でした。
MDPIのEntropy (APCは1800 CHF、$1800ぐらい) は査読期限は標準で10日、延長して14日、リバイズ時は3日でした。
また、MDPIで査読すると漏れなく別の論文の査読依頼、Special IssueのGuest Editorへの招待、Editorial Board Memberへの招待のメールなどを頻繁に送ってくれます。
リバイズ時の査読期限3日はかなり問題があると思います。

参考文献

  1. Theoharakis V, Skordia M. How do statisticians perceive statistics journals? The American Statistician 2003; 57(2): 115–123. DOI: 10.1198/0003130031414.
  2. Varin C, Cattelan M, Firth D. Statistical modelling of citation exchange between statistics journals. Journal of the Royal Statistical Society Series A (Statistics in Society) 2016; 179(1): 1–63. DOI: 10.1111/rssa.12124. [arXiv:1312.1794]
  3. Davidian M. ST 810A - Spring 2005: Preparation for Statistical Research [Internet]. June 29, 2005. [cited May 5, 2022]; Available from: https://www4.stat.ncsu.edu/~davidian/st810a/

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